起毛について

起毛針布の針先と布の表面との関係

第1図のような自動車の模型を作り、車体を矢印の方向に動かした場合

  • 自動車  ⇒ 起毛機
  • 車の車体 ⇒ シリンダ
  • 車の車輪 ⇒ 針布ロール
  • 地面   ⇒ 布の表面

と考えると解りやすいと思います。

実際の起毛機では、布は点線のように 弧 ab 弧 cdの局面に接触し、bc間は平面となりシリンダは一点鎖戦のような円です。

「起毛の実際」繊維社(昭和54年発行)より

(a)の場合

シリンダ(車体)を布(地面)より早く動かせると針布ロール(車輪)は布(地面)の表面を転がりながら、いわゆる共回りして回転しつつ移動していきます。
この時、針布ロールの表面と布表面の間でスリップがないとすれば、この状態を零(ゼロ)起毛と称します。

(b)の場合

針布ロールの軸とそれを支える軸受の間の摩擦抵抗(針布ロールを回転させる駆動装置の抵抗も含む)が大きくて、針布ロールの回転を妨げる時、針布ロールは共回りで完全に転がることができず、布表面を滑りながら回転して移動する(車の運転で地面が凍ったり水で濡れて滑りやすい時、ブレーキをかけるとスリップするのに似ている作用です)
ただし、パイルロール(P・R)は、針先が進行方向に向かっているために、針布が布に突き刺さると共回りに近い状態となり、それ以下の速さでは回転しません。

(c)の場合

したがって、針布ロールの軸にプーリーを付け、ベルトで回転させてやり(または歯車で回転させ)針布ロールが転がるようにする必要があります。

この回転させる力を強くしていっても、カウンターパイル(C・P・R)では、針布が進行方向に向かっているために、針布が布に突きささると共回りに近い状態となり、それ以上の速さの回転はなくなります。

なお、ゼロ起毛点の回転数はシリンダの回転数と布の送り速度で変化し、布速度が速いほどゼロ起毛点では低い回転数となります。

すなわち、起毛するためにはC・P・Rでは(C)の場合に針布ロールは布に対し、布の進行方向の逆方向にゼロ起毛点の回転数よりわずかに(少なくとも針先が布に突きささる分だけ)早く回転させてやる必要があります。

同様にパイルロール(P・R)では(b)の場合に、針布ロールは布に対し、布の進行方向にゼロ起毛点の回転数よりわずかに遅く回転させてやる必要があります。

「起毛の実際」繊維社
(昭和54年発行)より