起毛について

起毛針布の針先の起毛作用

マイクロスコープ画像

起毛作用は針先の微妙な作用であり、布に対する針の強さや弾力性、布と針先の摩擦状態、針の働角度、針先の形状と布の構造などの諸要素の影響を受けます。

この複雑な要素が相互に関連して起毛する状態はC・P・Rロールでは下図に示すように布に食い込んだ針先に引っかけられた繊維が針布ロールの回転(および布の進行)によって、ループ状に布面上に引き出されます。

「起毛の実際」繊維社
(昭和54年発行)より

起毛針布

  1. 針布の針先が布に食い込む程度
  2. 布より繊維を引き出す程度
  3. 引き出した繊維を均一な表面状態にそろえる程度

針先に引っかけられる繊維は、最初は多数のループの集合した状態で引き出され、そのために針布に集中した大きな力が作用し、針がたわんで見かけ上の働角度が大きくなり、針先よりループが滑り出してしまいます。
このループ群に次の針先が作用すると針先に引っかかるループ数が減少するので最初は少し長いループ群を作ります。この作用が順次積み重ねられ、最後には1本から数本の繊維を引き上げる時には針布ロールの針先を布との距離が離れた位置になるまで針布ロールは回転しています。

これによって、針布の働角度も布面に対して寝ていくために、針先よりループは抜け出すことができず、その後はループが切断しますが、ループの片足が布から抜け出して、毛羽状になるまで作用は続きます。

起毛時の布の張力

「起毛の実際」繊維社
(昭和54年発行)より

生地のダメージ、起毛風合いの点から考えると、できる限り張力は弱い方が良い起毛状態になりますが、弱めすぎるとシワが入ったり起毛段が発生する原因にもなります。

生地によって適した張力の調整が必要になってきます。

(一般的に毛の出やすい軽目の織物は張力をある程度強くし、また太い毛を密に打ち込んだ織物は布張力をある程度弱く起毛する場合もあります)